2月27日追記; 本記事の内容に沿ってアメリカの非居住者としての所得税還付を受けた場合は、日本の居住者として同額の所得を確定申告する必要があるようです。この話題について、詳しくはコメント欄を参照してください。

2月、そろそろ確定申告の時期ですね。これはアメリカでも同じで、とくに年度中に渡米して企業で研究インターンした日本人の大学院生は、払いすぎた所得税を取り戻す申請手続きを行うことができます。これは、J-1ビザで渡米している人なら基本的に全額戻ってきます。人それぞれですが、けっこうな額になるはずです。

研究インターンは博士課程の学生がほとんどであり、この手続きは該当する人でも高々1、2回程度しかしないため、なかなかノウハウが蓄積しません。そこで、関連する条約や手続きの流れを簡単にまとめておきます。

還付手続きは最終的には本人が書類を郵送する必要があるのですが、インターン先によっては支援サービスを提供してくれるところもあるようです。僕の経験では、Microsoft Researchは後述するW-2フォームを郵送してくるだけだった一方、Adobe ResearchはJ-1ビザ取得を外部団体に委託しており、その団体が還付手続きの時期になったら支援サービスのアカウントを一個くれました。

還付手続き支援サービスでは、質問に答えていくだけで必要な書類が全て揃います。ただ、日米租税条約上の僕の立場に関する解釈が僕の考えと違っているようで、僕としては全額還付されるつもりでいたのが、サービスから出力された書類ではそうなっていませんでした。どちらが正しかったかについては後日報告します。

5月21日追記; 全額還付されました。とりあえず、このブログ記事に書いた解釈が認められたものと考えてよさそうです。

J-1ビザ(Students and Trainees)

まず、この記事の対象になるのはJ-1ビザ取得者のなかでも、学生または職業訓練を受けている人たち(Students and Trainees)です。

J-1ビザは、他に、教師や研究者(Teachers and Researchers)に対しても発行されます。博士号取得後のインターンはもしかしたら研究者(Researcher)扱いになるのかもしれませんが、博士課程の学生に関してはTraineeとしての渡米が普通のようです。

日米租税条約

ふだん日本に住んでいて、一時的に渡米して所得を得た人は、所得税の還付を受けられる可能性があります。この取り決めが書いてあるのが日米租税条約で、1967年に締結されたあと、2003年に大きく改訂され、同内容が2004年に批准されました。最近だと昨年2013年に修正が入るなど、ときどき更新されるので、原典にあたるのが確実です。2003年に改訂されたときの内容はU.S. Tax Treatyにあります。

このような条約に関しては、海外からの読者を想定しているためか、わりと読みやすい解説書類などが用意されています。例えば、租税条約の内容を様々な国を横断してまとめた書類がU.S. Tax Treatiesで、どのような身分で渡米しているかの大分類が章立てになっていて、どの国から渡米しているか各節で説明しています。日本からStudents and Traineesとして渡米している人たちの処遇に関しては以下のように書いてあります。

A student or business apprentice who is a resident of Japan immediately before visiting the United States and is in the United States for the purpose of education or training is exempt from U.S. income tax on amounts received from abroad for the individual’s maintenance, education, or training.

Business apprentices are entitled to the benefit of this exemption for a maximum period of 1 year.

生活や教育、トレーニングのために受け取った所得に関しては所得税(全額)免除とのこと。

ただし、ビジネス目的のトレーニングだと一年限定とも書いてあります。私企業の研究インターンが「あくまで研究に必要な素養を身に付けるためにやるもので、ビジネス目的ではない」と判断されるか、あるいは「私企業のビジネスに資することをやっているのだからビジネス目的と言える、よって一年限定」なのかについては、現時点ではちょっと分かりません。ちょうど僕が現在このケースの二年目なので、還付手続きをしてみて、結果を報告したいと思います。

それで、先の文書には根拠となる条項へのリンクがないのですが、日米租税条約を読んでみると19項にちょうど対応する箇所があります。

Payments which a student or business apprentice who is, or was immediately before visiting a Contracting State, a resident of the other Contracting State and who is present in the first-mentioned Contracting State for the primary purpose of his education or training receives for the purpose of his maintenance, education or training shall be exempt from tax in the first-mentioned Contracting State, provided that such payments are made to him from outside that first-mentioned Contracting State. The exemption from tax provided by this Article shall apply to a business apprentice only for a period not exceeding one year from the date he first begins his training in the first-mentioned Contracting State.

基本的に同内容で、これをかみ砕いたのが先ほどの文章だったわけですね。ここまでで、所得税の還付が受けられることが確認できたと思います。

Form 1040NR-EZ, W-2, 8843

実際に還付を受けるためには、日本の国税庁に相当するIRS(Internal Revenue Service, 歳入庁‎)に直接書類を送付します。このような手続きをする人が必ず送付するのがForm 1040で、IRSのWebサイトには1040 Centralというページがあります。

1040にはいくつか種類があって、普段日本に住んでいる人は1040NR (Non-Resident)[PDF]を書くことになります。さらに、1040NRには簡易版1040NR-EZ (Easy)[PDF]があって、単身赴任者のようなシンプルなケースではこれを使えるようです。多くの研究インターン生が1040NR-EZになるはずです。記入例は米国公認会計士の若菜氏の解説ページが参考になります。

この記事の対象になる人は所得税全額還付してほしいわけですから、このフォームの欄番号22と23a(還付してほしい金額)が支払った所得税全額となるように書けばOKです。同じところに還付の方法を指示する欄があります。インターンで給与をもらっている人はほとんどがアメリカの銀行口座を持っているはずで、それならDirect deposit(銀行振り込み)が簡単だと思います。さらに、還付の根拠を2枚目の欄番号J-1に書く必要があります。具体的には、(a) Country – Japan, (b) Tax treaty article – Article 19, (d) Amount of exempt income in current tax year – 12となると思います。((c)は、初年度の場合0、2年以上連続でインターンしている場合は12。)

また、1040には別途、会社が発行する書類で、どれだけの所得を得たのかの証明になるForm W-2 (Wage and Tax Statement)を貼り付ける必要があります。W-2は3枚綴りになっていて、そのうち1枚を1040の表面に貼ります。

さらに、米国滞在期間について申告するためのForm 8843[PDF]にも記入する必要があります。記入例は例によって若菜氏の解説ページが参考になります。

これらのフォームに記入したら、ひとまとめにしてIRSに送付します。送付先住所は、フォームごとの送付先住所が一覧できるページに書いてあります。この記事を書いている時点では以下の住所のようです。シンプルですね。

Department of the Treasury
Internal Revenue Service
Austin, Texas 73301-0215

ここまでやりきったら、あとは還付を待つのみです。Form 1040の欄23aでDirect depositの指示を書いた人なら、数か月で銀行口座に指定額が振り込まれるはずです。


10 Responses to “J-1ビザで渡米した研究インターンの所得税還付手続き”

  1. Jun Kato (arc@dmz)

    旧19条→新20条に移されたTeachers and Researchersの場合はそうなると思います。(さらに、新20条は2013年の修正で削除されたようです。)
    http://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/tg1829.aspx
    http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/Income_Tax_Treaty_between_US_and_Japan_Amended/$FILE/Income_Tax_Treaty_between_US_and_Japan_Amended.pdf

    ただ、学生の場合はあくまでTraineeとしての渡米であり、この記事で引用している新19条に該当するため未だ完全なるタックスフリーの状態にあるように思えます。昨年はそれで全額返ってきました。私も専門家ではないので解釈が違っているかもしれませんが…。

    返信
  2. Eijiro Sumii

    おおっと、大変失礼しました。researcherではなくtraineeという大前提を見逃していました。m(_ _)m 私も(専門家ではありませんが条約の文面から)その通りだと思います。

    ちなみに、私が(税法上は)延べ6年分の米国滞在で見聞きした範囲では、仮に申告が間違っていても抽出されなければチェックされない感じのようなので、通ったから正しいとも限らない(笑)みたいです…。一応のご参考に。

    返信
  3. Y Horie

    初めまして。J-1 Student ビザ(2年目)でアメリカに留学している堀江と申します。分かりやすいまとめありがとうございます。

    私も加藤さんと同じ状況で、大学からもらっている給料から源泉徴収されている状況です。大学から配布されたGlacierという還付手続き支援サービスを使って情報を入力していくと、途中で”Treatyの対象にはならない”と出てくるので半ば諦めていました(2012年度分はtreatyによるexemptは申請せずにtax return提出済み、訂正して取り戻すことも可能だそうです)が、今年はtreaty適用になると信じてexempt申請してみようかと思った次第です。

    書類の書き方についていくつか参考にさせていただければありがたいです。Form 1040NR-EZの中で、Line 6にexemptされる額(W-2の項目1に記載されている額)を記入すると思うのですが、Line 6以降の計算ではLine 6を引用する項目がなく、後のLine 15あるいは17で支払うべきtaxがゼロにならないので混乱しています。加藤さんの1040NR-EZでは、Line 15あるいは17ではゼロとなりましたか?

    返信
    • Jun Kato (arc@dmz)

      こんにちは。返信が大幅に遅れて失礼しました。もう提出しちゃった後でしょうね…。

      一応ご質問にお答えしますと、Line 15, 17は、私は0として提出しました。
      こうすると、Line 22(払いすぎた額)が21(実際に天引きされた金額)と等しくなり、全額返ってくる計算になります。

      ただ、このコメント欄でも議論されていた通り、日本の居住者として判定されるため、日本で確定申告する必要があります。

      アメリカでの博士課程生活は大変だと思いますが、頑張ってください!

      返信
  4. T

    初めまして。私もJ1でアメリカに来たときには、払わなくて良いという人がほとんどでそうだと思っていたのですが、自分で調べた限り、「アメリカで受け取った給与については税金を払わないといけない」という文書しか見つけられず、今までの2年は税金を納めました。でも、本当に払わなくて良いのだったら還付したいです!

    そこでJunさんが引用されていた文書ですが、やはり、

    exempt from U.S. income tax on amounts received from abroad for the individual’s maintenance, education, or training.
    個人の生活費、教育費、トレーニング費は、「日本での給与に関しては」(on amounts received from abroad)、米国滞在時の所得税から免除する。

    「米国の外(日本)から受け取る給与に関しては」(provided that such payments are made to him from outside that *first-mentioned Contracting State* = 米国)

    と書かれてはいないでしょうか?

    でも、私の周りの日本人も、ほとんどの人がtax treaty申請だして、みんな問題なく通っています。
    仮に通らなかったとしても、たぶん利子が少しついて払えばすむ問題なので、私は馬鹿なことをしたということ、自分でも分かっています。
    でもお金はいいんです。ただ最も妥当な解釈を知りたいんです!

    返信

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