CHI 2009 Closing Plenary - 参加者全員に向けてSRC勝者がアナウンスされた

CHI 2009 Closing Plenary – 参加者全員に向けてSRC勝者がアナウンスされた

ACMの国際会議には、通常の登壇発表やポスター発表とは別に、Student Research Competition (SRC)という学生対象の研究コンペが用意されていることがあります。Microsoftがスポンサーとなって2003年から続いており、会議ごとに毎年、複数のシニアな研究者が審査員として任命されています。なお、会議によってはSRCがない場合もあります。自分の参加してみたい会議のWebページをチェックしてみましょう。

学生が発案し、主導的に行っている研究について発表するとてもよい機会であり、僕自身は学部のときと博士課程のとき、あわせて2度参加しています。タイミングによって、学部の卒業論文を発表する場(CHI 2009)として、また、異分野に参入するきっかけ(PLDI 2013)として活用しました。

今学生の皆さんにはぜひ挑戦してみてほしいと思うので、実例も交えつつ、コンペの概要を紹介します。ちょっと長くなりそうなので、この記事では概要と論文投稿までの流れを説明します。次の記事とセットでどうぞ。

SRCに挑戦すべき理由

SRCの狙いは、公式サイトでは次のように説明されています。

  1. 研究の世界を体験する (多くの学部生にとっては初めての体験!)
  2. ほかの学生、審査員、そして会議参加者と、研究の成果を共有して意見を交換する
  3. アカデミアおよび産業界の有名人と親睦を深める
  4. 研究の応用について考える機会にする
  5. コミュニケーション力を磨く
  6. 賞をもらってACMひいてはコンピュータ系コミュニティでの認知度を向上する

1点目については、国際会議で起きる様々なイベントを一度に効率よく体験できるという意味で、学部生にとって本当によいイントロダクションになると思います。うまくいくと、このあと詳しく説明していきますが、1.論文を投稿して査読結果をもらい、2.ポスター発表で次々訪れる聴衆に効率よく説明を行いつつ、近い距離での質疑応答をこなし、3.登壇発表によって多くの人の前で喋る…という一連の流れを体験できます。このプロセスを一通り体験すれば、5点目に書いてある通り、研究のためのコミュ力は間違いなく磨かれると思います。

2点目について、コミュ力次第では海外の大学の友人ができると思います。僕の場合、SRCで競い合った相手とはFacebookで友達になるところまでで、その後はとくに何もありません。審査員は、学部生にはそこまで注意を払っていないような気がしますが(だから気楽にいきましょう!)、院生なら何となく顔を覚えてくれる…はずです。会議参加者とのインタラクションは、主にポスター発表で発生します。次々訪れる参加者から質疑を受けることは、英語を話す練習になると思います。これと関連して3点目、有名人と親睦を深めるチャンスはとくにありませんでした。ただ、ポスター発表などでほかの人に交じっていろいろ聞いてくることはあったので、積極的に食らいついていけば覚えてもらえることもある、かもしれません。

4点目は営利企業であるMicrosoftがスポンサーしているからこそ用意されている項目と言えるかもしれません。あまり意識したことはありませんでしたが、さまざまある研究のなかでも分かりやすい(ときに突拍子もない)プロジェクトが好まれる傾向にあると思います。また、6点目について、入賞しておけば研究経歴に書けるというのは地味に大きいです。学部生部門は参加者があまりいないことも多いようで、おトクです。

SRCに挑戦すべきでない理由

ここまでSRCの狙いに沿って挑戦すべき理由ばかりを書いてきましたが、では逆に挑戦すべきでない理由はあるのでしょうか。

例えば、SRCへの論文投稿がArchivalなのか、それともNon-archivalなのかということは少し気にしておいたほうがよいかもしれません。いったん論文がArchival扱いされると、新規な内容を追加しない限り、同じトピックの論文を別のセッションや会議に出せなくなります。ただ、Extended Abstractが正式にArchival扱いされるという話は聞いたことがありません。CHIの場合はSemi-archivalといって、ArchivalとNon-archivalの中間として扱われます。これはCHIのポスター発表でも同じです。僕の場合、CHIのSRCに出した内容を同じ年のUISTという会議に出したところ、「SRCで見た」「もっと差分を出してから投稿しなさい」と批判されて、けっきょくフルペーパーとしてはどの会議にも出さずに終わりました。Google Scholarで見るとSemi-archivalの論文がどんどん参照されているので、Semi-archivalはArchivalに近い扱いだと考えたほうがいいのかもしれません。PLDIのSRC論文は完全にNon-archivalでした。ただ、同じトピックでも実装を一から書き直し、全く書き方を変えてグラフィクス系の学会に出し直しています。

まとめると、グレーゾーンではありますが、SRCに出した研究内容は、そのままの状態で同じ学会の別のセッションや別の会議には投稿しないほうがよいでしょう。これは、SRCへの挑戦をためらう理由になりえます。逆に言えば、今している研究が、まだ途上であり今後もっと発展させる気があるのであれば、出さない理由はないと思います。また、自分の専門分野とは少し離れた学会のSRCに自分のテーマを引き付けて投稿することができれば、研究の幅を広げることにも繋がります。僕の専門はHuman-Computer Interactionであり、プログラミング言語ではなかったのですが、あえてプログラミング言語分野の学会PLDIのSRCに出てみたのはそういう訳です。今ではプログラミング言語系の研究論文も抵抗なく読めるようになりました。(ちゃんと理解できるかどうかは別として…)

SRCの流れ

SRCは学部生部門大学院生部門があり、それぞれ別枠で選考が行われますが、どちらも次のようなプロセスで審査員も全く同じです。

  1. Extended Abstractの提出
  2. ポスター発表
  3. 登壇発表
  4. Grand Finals

以降、この順番に内容を説明していきます。

CHI 2009 SRC第2ラウンドの様子

CHI 2009 SRC第2ラウンドの様子

第1ラウンド: Extended Abstractの提出

SRCに参加するには、Extended Abstractというポスター発表以上会議論文未満のフォーマットで英語論文を書いて投稿します。このとき、ポスターのデザインを同時に投稿することを求められる場合もあります。CHIは、ポスターのデザインを考慮に入れて選考が行われる旨が明記してありました。これは、あくまで内容で判断される通常のポスター発表ではありえないことで、学生のプレゼン能力を鍛える場としての役割を重視した特別ルールだと思われます。

論文を投稿すると、〆切から比較的短期間のうちに査読結果が返ってきます。これは、SRCの審査員による通常の論文と同様の査読プロセスです。もしこの第1ラウンドで落ちても、査読結果を今後の研究に役立てることができます。CHIの場合は、SRC第1ラウンドの選考に漏れても、希望すれば通常のポスターセッションへの投稿として見なしてもらうことができ、ポスター発表を行うチャンスが与えられます。

第2ラウンド以降

第2ラウンドからはいよいよ会議に参加して、ポスター発表や登壇発表を行います。詳しくは次の記事をご覧ください:)


2 Responses to “ACM Student Research Competition参加のすすめ”

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  1. ACM Student Research Competition参加のすすめ (続き) | junkato.jp

    […] ド以降の流れを紹介します。概要とSRC第1ラウンドの紹介は前の記事をご覧ください。 […]

  2. ACM Doctoral Symposium (Consortium) 参加のすすめ | junkato.jp

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