メタ科学
科学のためのHuman-Computer Interaction

2018
特集: 研究再現性問題

概要

これまで、科学技術全般に広く関心を持っていろいろな活動をしてきました。一貫しているResearch Questionは、コンピュータの力を借りたらどれだけ科学技術に関するアウトプットを効率化・最大化できるか?(科学のためのHuman-Computer Interaction)です。

HCIと研究再現性問題2018

ブログ記事をきっかけにご縁をいただき、ヒューマンインタフェース学会誌の第20巻1号「特集: 研究再現性問題」に寄稿しました。ヒューマンインタフェース・Human-Computer Interaction分野の研究者が研究再現性問題とどう向き合うべきか、自分なりに調べ、人に相談し、書いてみた原稿です。

研究再現性問題について縦糸で語るなかで、(1) そもそもHuman-Computer Interaction分野の研究とは何であるのか (2) どう進めるべきなのか、さらには (3) 科学技術全体のなかでどんな役割が果たせるのか という問いに対する自分なりの回答を横糸で編み込んだつもりです。ヒューマンインタフェース学会に許諾を得て全文を公開しているのでぜひご一読いただければと思うのですが、とくに3点目で私が伝えたかったポイントを本文26ページ目から抜粋します。

HI/HCI分野における再現性向上のための取り組みは多層的で、こうすればよい、というはっきりした道筋が見えにくいことが多い。その根幹には「そもそもHI/HCIは一体どんな学問なのか?」という問いが横たわっている。これに答えるために、コミュニティ内ではメタ科学的な取り組みが行われてきた。例えば、HCI研究を類型化して研究上の貢献の種類に応じて評価手法を別々に論じる研究 [a, b]や、中でもツールキット研究に限定して進め方や評価手法について議論するワークショップ [c]既存のツールキット研究を詳しく分析したサーベイ [d]などが行われてきている。こうした自己分析をメタ科学的なレイヤーで行うことは、学問分野の重要性を広く科学者コミュニティに伝えるための論点整理として非常に重要である。

一方で、我々HI/HCI研究者は人と人工物/コンピュータのより良い関係を築く専門家である。自己分析から一歩進んで、コンピュータありきの現代における科学のあり方を建設的に提案することもできるはずである。コンピュータ科学の古典的エッセイ論文に「The Computer Scientist as Toolsmith [e]」というものがある。HI/HCI分野におけるツールキット研究を持ち出すまでもなく、我々は人類の知的生産のための道具を作る応用科学者であり続けてきたのだ。(略)

ただ、研究の再現性を向上し、研究を加速するツールについて正面から取り組んだ研究はHI/HCI分野ではまだ多くない。研究ノートとして開発されたJupyter Notebook [f]は論文を執筆する目的でも使えるようになりつつあり、同様の取り組みは学術出版社ElsevierがExecutable Papers [g]という名の下に進めている。研究用ツール開発に取り組むスタートアップ企業も増えてきている [h]。今後、こうした社会の要請に応えるHI/HCI分野発のメタ科学研究が増えていくことを願っている。

ヒューマンインタフェース研究における再現性向上に向けた取り組み

2018特集: 研究再現性問題メタ科学
加藤 淳
ヒューマンインタフェース学会誌 20(1), pp.23-28

特集号掲載論文

本特集には他に以下の記事が掲載されており、すべてWeb上で閲覧できます。

松田 昌史特集によせて: 心理学界を他山の石とする
三浦 麻子人を対象とした行動学研究における再現性問題
樋口 匡貴・藤島 喜嗣アスタリスク~真実の意思を求め(すぎ)て
山田 祐樹再現可能性問題をハックする―是非に及ばぬ研究コミュニティからの包囲網―

MIT原子力理工学部による原子力発電の解説(翻訳)2011

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震以降、東日本大震災の一部として福島第一原子力発電所事故が起きました。原子力発電の仕組みをある程度知っておかないと解釈に悩むニュースが流れ、分かりやすく基礎知識を得られる情報源に対する需要が高まりました。

そんな折、楽観的な見通しを語るMIT研究者Dr. Josef Oehmenによる福島第一原発事故解説がTwitterなど主にインターネット上で拡散しました。しかし、これを執筆したOehmen氏は原子力の専門家でなく、内容が必ずしも正確ではありませんでした。そこで、MITの名前で広がってしまった責任を取るかたちでMIT原子力理工学部(NSE)の学生有志が学部の協力を受けてmitnse.comを立ち上げ、改訂版を公開しました。また、これに続いて様々な基礎知識を啓蒙する記事を執筆しました。

これらの記事を、Google Docsを使って複数人で協力して和訳し、さらに注をつけて一連のブログ記事として公開しました。共同作業のハブとなったGoogle Docs「MIT NSE (mitnse.com) 翻訳記事の一覧」は、下記の立花隆ゼミで目指していた「Q&Aサイトとリンク集」となっています。Web技術の進歩により共同作業が容易になったことを実感した出来事でした。

立花隆ゼミ2005-2007

ジャーナリストの立花隆氏が開講していた東京大学教養学部 全学自由研究ゼミナール「先端研究現場へ行こう」で幹事などを務めました。このゼミの目的は、科学技術総合メディアサイト「SCI(サイ)──サイエンスの、最先端を。──」を作ることでした。

SCI(サイ)は、立花氏の言うところの「巨大Q&Aサイトと巨大リンク集」を目指していました。詳しくは、立花氏の文章をご一読ください。学生は、それぞれに対応する以下の2つの活動に取り組むことになります。(TogetterはおろかTwitterも存在しない2004年当時からキュレーションに着目していた点は、立花氏の先見の明だと思います。)

  1. 学部生が「Q」を発し、研究者の方々に「A」を提供していただく、取材をベースに記事を執筆する活動
  2. すでに各研究機関やニュースサイトが掲載しているさまざまな情報をキュレーションする活動

私は、このゼミの幹事を務めながら、ゼミ生のアウトプットをなるべく最大化できる仕組み作りに尽力しました。

コンテンツ管理システム(CMS)開発

必ずしもコンピュータが得意でないメンバーもいるなかでWebメディアを作るという挑戦は、WordPressなどのコンテンツ管理システム(CMS)黎明期には容易ではありません。WordPressの初版リリースが2003年5月、ゼミ開始は2005年4月です。とくに、先に挙げたような記事掲載とリンク集のようなキュレーション作業をどちらも行えるシステムは見つかりませんでした。そこで、フルスクラッチでシステムを構築し、ゼミ生に使ってもらいました。

その際、誰がどこに貢献したか、責任を持っているかを明確にするため、執筆者(記事を書いた人)担当者(記事の企画を立案した人)制作者(記事のHTML書き起こしとWeb掲載を行った人)を全ページに記名することとし、そのための個人認証の仕組みも実装しました。この個人認証のしくみは、NHKスペシャルなどと連動した掲示板コンテンツでも利用されました。

Chippie
主にニュース配信を目的とするWebサイトのコンテンツ管理を容易にするPHPフレームワークです。
2006-2008Design Toolkit

企画立案・冊子刊行

科学技術に関する最先端のニュースを分かりやすく伝えることは、容易ではありません。そこで、SF作品のビジュアルが持つ魅力を借りながら科学技術について論じられないかと考え、「イノセンスに見る最先端科学」を立案しました。また、学園祭などでイベントを行うにあたり、現地での頒布物として、ゼミのそれまでの活動の一部をまとめた冊子を刊行しました。

イノセンスに見る最先端科学
イノセンスに見る最先端科学
SCInote
SCInote [PDF]
SCInote2
SCInote2 [PDF]