ユーザインタフェース設計

2021
関連キーワード: UI, Toolkit, Design, Live

はじめに

Myersらの1992年の調査によれば、一般的なグラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface; GUI)アプリケーション開発でコードの48%、実装時間の約半分がユーザインタフェース部分に割かれているといいます。それだけユーザインタフェースの設計は難しいプロセスなのです。

ユーザインタフェース設計で役に立つ基礎理論や評価手法、支援ツールは、人とコンピュータの関係をよりよくしていく学問 Human-Computer Interaction (HCI) で研究、開発されてきました。ただ、こうした知見を体系化されたかたちで学習する機会は(とくに国内では)必ずしも多くありません。

このWebページでは、自分が研究者になるにあたって知っておきたかった基礎的なことを、参考文献を挙げながら紹介します。想定している読者層は HCI を専門にする学生や、ユーザインタフェース設計の実務にあたっている方々です。基礎理論、デザインの評価手法、デザインで気をつけるべきポイントまで幅広く扱います。

日本音響学会「やさしい解説」2021

このWebページは、日本音響学会 学会誌 77 巻 4 号(2021)に掲載されている「やさしい解説」の記事「インタフェース・デザインの勘所」の補足資料を兼ねています。本誌記事では、このページでカバーしているテーマの他に、GUIプログラミングの2類型(Retained GUI、Immediate-mode GUI)などについても紹介しています。

また、本誌では、音響アプリケーションのユーザインタフェース開発事例を紹介する記事が続けて掲載されています。日本音響学会の猛者の方々による、MATLAB、Python(PyQt)、Maxというかなり性質の異なる環境での開発事例紹介となっており、PXの観点でも非常に興味深い内容です。刊行から半年が経ち、無料で全文公開されました。ぜひ併せてご覧ください。

インタフェース・デザインの勘所

加藤 淳
日本音響学会誌 77(4), pp.231-238

インタフェース設計の理論

モデル化手法の限界

ここまで、ユーザとシステムの間のインタラクションをモデル化した成果を紹介してきました。実行の淵と評価の淵ダイレクトマニピュレーションなどの考え方は、インタフェース設計の方向性を検証するための強力な武器となります。そして、ユーザを情報処理プロセッサに置き換えて考えることで、インタフェースの定量的な性能予測ができるだけでなく、使いやすいインタフェース設計の法則が得られることもあります。

ただし、こと後者の性能予測に関しては、実際のGUIアプリケーション開発に適用できないことが少なくありません。ユーザのタスクが定型的にモデル化できないほど複雑となるためです。また、ボトムアップで性能予測を積み上げても実用精度を得られないだけでなく、そもそも熟練者の作業効率だけでインタフェースを評価することが不適切なこともあります。そこで、以降はより包括的にインタフェースのよしあしを評価する方法を紹介します。

ユーザビリティ

Nielsenが1994年に記した書籍「Usability Engineering」では、インタフェースの使いやすさをユーザビリティという言葉で表し、次の5つの特性を示しました。

  1. 学習しやすいこと
  2. 作業効率が高いこと
  3. 覚えやすいこと
  4. エラーが発生しにくく、発生しても復帰しやすいこと
  5. 主観的な満足度が高いこと

前節で紹介したユーザモデルは 2. の観点しか考慮できていません。かといって、これだけ複合的で総体的な評価を行うのは、容易なことではありません。

本節では、ユーザビリティを評価する方法を3種類紹介します。最後に、ユーザビリティも万能ではないことを、実例を挙げながら説明します。

以降は執筆中

情報提示のデザイン

色のデザイン

動きのデザイン

おわりに

更新履歴

10/6/2021
本文無償公開に伴い、日本音響学会 学会誌 77 巻 4 号(2021)記事「インタフェース・デザインの勘所」へのリンクを有効化
6/19/2021
ユーザビリティのセクションを追加
5/19/2021
執筆中の範囲への導入を追加
4/12/2021
フィッツの法則について加筆; 執筆中の範囲の目次を掲載
4/11/2021
初版を掲載